戸締り ガス 電気 のコンセントを何回も確認したり、 手を何回も洗う
ある考えや思いが、意味がない、理屈に合わない、ということがよくわかっているのですが、どうしてもその考えをやめられない、あるいは、それを取り消すような行為を繰り返したり、確認しすぎることに、悩まされる方がいます。その症状は強迫症状と呼ばれます。何回も見直し、念を押し、確認しないと不安になります。まるで試験中に解答内容を確認するかのごとく点検するのです。
一口に、強迫症状といってもその症状は、人によって、“何にこだわるか”、“なにが気になるのか” “何を確認するか” “どんな行為を繰り返すのか”。これから、強迫症状について、具体的に説明します。
具体的な症状とは
以上のように強迫的なこだわり 確認癖は、多くのタイプがあります。
1つの 確認癖に悩まされる場合もありますが、ストレスがかかり精神的に疲れてくると、次から次へと症状の対象が広がり、心の中はぐったり疲れ、虚脱感を感じます。
強迫症状が続くと
このようなこだわりが続くと、強迫症状によってあたかも心が支配され、占拠されたような、感じがして、他のことが考えられません。よくあることなのですが、強迫感は妄想と誤解されます。しかし、それは全く違います。妄想とは、誰が正しく説明しようしても、間違いであると認めない、それが妄想です。つまり誤った訂正不能の信念が、妄想であって、強迫感は自分では、「間違ってる意味がない」と充分にわかっています。しかし強迫症状は、とても辛い症状です。止めようとすると、不安が生じ、なかなか止めることができません。そのため、心の中がすっきりせず、気が張り詰めます。その上、確認のため時間を無駄にし、したいこともできず、行動にブレーキがかかり、外出すら困難になります。
強迫症状の原因とストレスについて
強迫症状は、とても心配性で、こだわりやすい、神経質な性格が、原因と思われがちです。しかし強迫症状は、そんな単純なものではありません。その原因は、過去のトラウマ、現実のストレス、完全さを求める性格、それに脳内の伝達物質の変化などが複雑に関係しているのです。最初に、トラウマについて、例を挙げて説明します。
そういったに辛い経験がトラウマとして、心の中に残存し、確認しないと、「何か不吉なことが起こる」「取り返しのつかないことが起こる」など不安を感じます。さらに現実のストレスが強いと、あるいは様々なストレスが重なると、心の免疫力が低下し、強迫症状が出現します。ストレスとは、過労、人間関係のトラブル、経済的な問題 育児や介護疲れなどです。次に、強迫症状に陥りやすい性格について説明します。、完全さを求めミスが、許せない。その上、疑問を感じた時は、納得がいくまで調べる性格です。つまり物事を、“ほどほど” “適度” に済ませられない人です。大きな失敗は無いものの、なかなか決断が下せず、消極的になります。それ以外、原因としては、脳生理学の研究から、脳内のセロトニンなどの神経伝達物質の異変が、強迫症状に関係していると言われていますが、まだそれも充分に解明されていません。
強迫症状とうつ病
強迫症状がうつ病などの、心の病気の初期症状 として現れることがあります。
その場合、強迫症状以外に、うつ病の症状が徐々に出現します。
・考えがまとまらない ・集中できない ・意欲気力がでない ・人と接するのが億劫になる
・自分を責める ・夜眠れない ・食欲がない ・疲労を感じる
このような症状です。
うつ病による強迫症状は、次から次えと対象が変化し、確認癖やこだわりもとても強くなり、何十回も鍵を確認したり、手が荒れるほど手を洗う。あるいは「自分の行動や言動が良かったのか?」自問自答を執拗に繰り返します。このような症状に苦しめられ、日常生活も支障をきたします。強迫症状に、うつ病を伴っている場合は、早期に心療内科 精神科に受診し、治療を受けなければいけません。もし抗うつ剤などを服用しても、症状が改善しない時は、休職しストレスを避け、症状で疲れた心を休める必要があります。
こだわり、確認の心理の背景に
私たちの心の中には、“もしかして、この考え方、この行為は、間違っていないか”“あるいは良くないかもしれない”など無意識のうちに瞬時に判断し、チェックする機能があります。これを心理学では、“超自我機能”と言うのですが、この機能が強すぎると、自分の考えや行為を厳しく、何回も、見直し、確認しミスや誤りが少なくなる性格になります。さらに、良心的で常識を非常に重んじます。しかし、心の中は、とても窮屈で緊張感を感じ、重ぐるしくなります。ささいなことでも自信を失い、やり切れない気分になり、柔軟性を欠くようになります。強迫症状の心理の背景に、このように、厳し過ぎる超自我の機能の弊害があります。
強迫症状と人間関係のストレス
強迫症状の患者さんは、予想通りに物事が進まなければ、とても不安になります。確認し間違いが少ないのは、仕事や学業にとってはプラスです。ところが、人間関係においては、柔軟性を欠きマイナスになります。自分の言動にとらわれ、気軽に人と付き合うことが難しくなり、相手もそれを意識し、お互いがストレスを感じるようになります。人と接する喜びより、緊張しわだかまりを感じ、すっきりしない思いが残ります。
心療内科医としてのアドバイス
強迫症状と心のケア
強迫症状は、その程度は人によって様々です。支障なく日常生活がこなせる場合もあるし、逆に不安のために行動が制限され、外出すらできない時もあります。ケースバイケースに応じて、おのずから治療期間や治療法は変わりますが、いずれにおいても、症状を改善する薬を服用してもらいます。強迫症状だけでなく、ストレスや不安を弱める抗不安剤や抗うつ剤などを服用してもらいます。服用すれば、こだわり 緊張感 閉塞感が弱まり、心の中にゆとりが生まれ、強迫症状が、あっても気にならなくなり、日常生活を取り戻していくようになります。それに加えて、心理療法を行います。カウンセリングの中で疲れた心をサポートし、症状だけでなく、今抱えている悩み、 不安 、ストレスを、語ってもらって、私たちは傾聴し受け入れ、“どのようにすればいいか”アドバイスを送ります。また患者さんの性格的な特徴やストレスの対応なども話し合い、自己理解を深めていただきます。紆余曲折もありますが、このようなケアが進むうちに、広い視野に立って物事を見れるようになり、柔軟性が高まり、強迫症状が改善します。
まとめとして
「間違いがないかどうか、確認してください!」「もし、ミスがあったら、原因を突き止め、直してください!」と、現代社会は、私たちに強要します。もしかして、自由な意志 発想よりも、完全さを目指し、間違いがないか、確認することの方が、価値が高いと、社会は考えているのではないでしょうか?「職場 、研究所、学校だけでなく、様々な分野で、そのような傾向があるのでは?」と私自身感じています。その上、世の中の変化は激しく、将来どうなっていくか予想できません。しかも現代は、完全さを求めても、確認しにくい、不確実な社会です。だからといって、現代社会のそういった矛盾が強迫感の全ての原因ではあるとは言えません。「しかしその原因の1部を担っています」と思います。人間の社会は完璧なものではありません。家族 友人 恋人に完全さや完璧さ を求め、気持ちを確かめるすぎると、とげとげしくなり、何か心の壁を感じて、親しみがわきません。。確認癖で悩める方は、そのような現実を踏まえ、完璧さを求めるよりも、「明日は明日の風が吹く」「何とかなるなる、どうにかなる」と少しのんきに、楽観的に構えてください。それが、心療内科医としての私の願いです。
最後に
私が旧大阪新聞で連載した心の健康相談の中でのコラムをホームページのために要約しました。症状理解に役立てば幸いです。
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